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みんなで描こう、夕張メロンの未来。

座談会 夕張市長×農協青年部 みんなで描こう、夕張メロンの未来。

※この座談会は2012年に行われたものです。

座談会参加者

  • 夕張市長:鈴木 直道

    夕張市長:鈴木 直道

    2011年、市長に当選。同時期に結婚した奥様とともに夕張に根を下ろし、夕張市の再生と街の活性化を目指して奮闘の日々。

  • 夕張市農協青年部 部長:本間 悠貴

    夕張市農協青年部 部長:本間 悠貴

    メロン農家としては2代目。結婚10年目を迎えた奥様、ご両親と家族中心の経営で夕張メロン生産にあたっている。

  • 夕張市農協青年部 副部長:百瀬 進

    夕張市農協青年部 副部長:百瀬 進

    大学を卒業後、家業を継いで夕張メロン農家として就農。2012年で、就農して11年目となる。

  • 夕張市農協青年部 参与:村越 裕一

    夕張市農協青年部 参与:村越 裕一

    昨年度の青年部部長。現在はアドバイスなどを行う立場だが、ご本人は「みな完璧に業務を遂行するので、たいして相談は受けないですけど…」との弁。

  • 夕張市農協青年部 会計:原 広志

    夕張市農協青年部 会計:原 広志

    夕張メロン農家としては2代目。会計のほか、イベントなどを行う組織部の一員としても活動。この日は朝4時から農作業に当たっていたそう。

  • 夕張市農協青年部 理事:鎌田 利郎

    夕張市農協青年部 理事:鎌田 利郎

    夕張メロン農家としては2代目で、就農して8年目。営農部のチーフとして活動している。

ブランドの重みを肌で感じた50周年を経て、「夕張メロン」は次のステップへ

座談会の様子01

本間 夕張メロンが50周年を迎えたのは、2年前の2010年。その年の行事で最も大きかったのは「夕張メロン組合創立50周年記念式典」でした。

村越 生産者だけで50周年を迎えられたのかっていうと、それは違います。取引先、業者の方、お客様の力、周囲の皆様の力添えがあってのことなので、みんなでお祝いしようと、ご尽力いただいた方々を招待して式典を開催しました。

本間 式典の最後には出席した青年部員全員が壇上に上がり、当時の青年部長が決意表明をしました。「100周年を目指して頑張っていかないといけないと感じている。大いなる財産を受け継ぎ、さらに進展させることが使命」という内容のことを話しました。

原  僕もその時壇上に立ったのですが、もうどこ見ていいのか…(笑)。ご出席くださったのは、本当にそうそうたる方々。また、それほど大勢の関係者が一堂に会するという機会は今までなかったので、若手の生産者としては圧倒されたし、大きな責任を感じました。周りの反応を知れば知るほど、夕張メロンというブランドの重みを強く感じましたね。

本間 プレッシャーは裏返せば大きな期待といえます。夕張メロンが50周年を迎えられた最大の理由は、夕張にしかない唯一無二のメロンだから。夏になるとこのメロンを待ってくれている人がいる。その人たちの期待を壊さないように夕張メロンをつくり続けていきたいという思いを新たにしました。

座談会の様子02

鎌田 ほかには、50周年を機に、専用の化粧箱に「夕張市農協検査場発」のロゴが印刷されるようになりました。

本間 テレビなど報道で取り上げられることも増えましたね。こうしたことで、ブランドの認知度はますます高まったと思います。

鈴木 2011年は天候が思わしくなく、生産者にとっては大変厳しい年だったと伺っています。でも、そうした中で生産者のみなさんは一致団結して、良い品物を出荷してくださっていました。そして、その年に夕張メロンは北海道功労賞を受賞しました。とても大きな出来事だったと思います。今年は天候も良く、順調に出荷が進んでいて、50周年から良い流れでここまで来ていますよね。

「高嶺の花」のままじゃダメ。ブランドの高級さはそのままに、消費者とメロンの出会いの場を増やす工夫を。

座談会の様子03

鈴木 先日、ある夕張メロンフレーバーの新商品の打ち合わせに参加させていただいて、マーケットリサーチの資料を見る機会があったんです。その資料によると、これだけ全国にさまざまなブランド青果がある中で、夕張メロンの認知度は日本一だったんです。それも圧倒的な数値で。北海道でイメージするフルーツとしても1番。どちらもものすごい強みです。長きにわたってこんなに1つのフルーツが知られ、愛され続けることはなかなかないことです。

村越 そうですね。「赤肉メロン=夕張メロン」と勘違いされている状況もまだありますけど…。

本間 僕自身、あるスーパーで、全然違う赤肉メロンを「夕張メロン食べてかない?」ってすすめられたことがあるんですよ(笑)

一同 (笑)

本間 夕張メロンは夕張の生産組合の農家だけが作っていて、夏の旬の時期しか食べられない季節限定のもの。そこを勘違いされるのは生産者としてとても歯がゆい。夕張メロンの特徴を、販売に携わる人も含め、お客さんにもちゃんと理解していただけるよう、伝えていかなくてはって思いますね。

鈴木 また、もっと“食べてもらう”試みも必要かもしれません。僕が道外の方々と話をすると、先ほどお話ししたように高い知名度を誇る一方で「一度食べてみたい」という声がすごく多いのが印象的なんです。つまりは、「食べたことがない」ということなんですよ。「手の届かない存在だよね」と言われてしまうので、「送料込みで安いものでは3000円台なんですよ」「インターネットで買えますし、市内でも手頃な価格で買うことができますよ」って話すんですけどね。

百瀬 なるほど…。

鈴木 ただ、それは、まだまだ販路開拓の可能性があるということでもある。夕張メロンは、食べれば価値がわかるフルーツだと思うんです。僕は初めて夕張メロンを食べた時に、その味わいにびっくりした。人って食べ物を見た時に、香りや見た目で味を想像しますよね。それで、食べてみて、当初の想像の範囲を超えていた時に衝撃を受けると思うんです。僕にとって夕張メロンはまさにそういった「感動する」フルーツでした。当時、まだ交際中だった妻が数日後夕張に遊びに来る予定だったので、食べさせてあげようと半分とっておいたんですけど……結局、我慢できなくて彼女が来る前に全部一人で食べちゃった。それは、今でも妻には秘密にしてます。

座談会の様子04

一同 (笑)

鈴木 だけどそのくらいおいしかった。正直言うと、東京にいる頃は、僕も夕張メロンを遠い存在に感じていました。でも、おいしいものを食べた時には、不思議なもので人って誰かに伝えたくなる。自分が感動を味わってみて、「まだ経験していない人にもぜひ味わってほしい」と今はより強く思っています。

村越 夕張メロンのギフト利用は、年配の方の割合が高いんですよね。でも、昨年都庁で販売イベントをした時に驚いたのは、20代、30代の若い方も意外と買っていくということ。多くは自分で食べるためだと思うんですが、2日間販売を行ったら、初日にいらしたお客さんが「おいしかったから親に贈りたい」ってまた来てくださったりもした。

鈴木 今は少しずつ御中元などの慣習が薄れて、食べたいものは自分で取り寄せて食べる。消費の動きが変わってきた感覚がありますよね。

村越 はい。でも、周りの人に贈ってあげたいと思う人もやっぱりいる。そういう人をどうやって見つけて、ファンになっていただくかも課題なのかなと思います。

鈴木 夕張メロンがほかのギフトと違うと感じるのは、かなりの確率で御礼の電話が来ることです。「おいしかったよ、ありがとう」って、手紙じゃなく電話で伝えられる。そうやって直接言われちゃうと、やっぱりね、「また贈んなきゃいけないなあ」って思う。

一同 (笑)

鈴木 高価なものを贈ってもらったという印象プラス、おいしいという感動で、「これはもう直接伝えなきゃ!」って、人の心が動くということですよね。その波及効果は大きい。そこでファンも生まれるし、消費の循環も生まれる。

百瀬 やっぱり、とにかく一度食べていただくことが大切ですね。

鈴木 本当にそうです。価値のあるメロンだから、もっと皆さんに親しんでもらいたい。だからこそ、食べるところに行き着くまでの情報提供が、これからは重要になってくるのかなと思います。50年間、毎年栽培技術の精度をあげてきたように、地道にファンを開拓し、獲得していく試みは大事になってきますよね。

本間 農協では、父の日にギフトとしてメロンを贈ろうっていう働きかけはしていますよね。

座談会の様子05

鎌田 そのほかにも、出荷最盛期の7月くらいにメロンを食べる日があったりしたらいいですね。何か記念日を作って習慣化できたらおもしろいかも。

本間 6、8、10とか、丸がつく日はメロンの日にしちゃえばいいんじゃない?(笑)

鎌田 七夕はメロンを食べる日にしちゃいますか? 市長、それで今度からアピールしてみてください!

鈴木 それは…七夕と夕張メロンの間に、もうちょっと強いストーリー性がないと厳しいなあ…(笑)

村越 海の日とかはどう?スイカ割りならぬメロン割りをおすすめしてさ。

一同 (笑)

地域にも、今以上に愛される。それもブランド維持の重要な鍵。

本間 贈り物の話でいうと、学校の先生なんかよく言うんですが、夕張に住んでいると、ギフトは夕張メロンになるそうですよ。

村越 生産者も収穫時期の贈り物はやっぱり夕張メロンですね。毎年親戚には贈りますね。楽しみにしてくれているし。

鈴木 夕張に住んでいれば夕張メロンを贈ったり、自分たちで消費したりする機会は多いですね。だって地元なんだもの。夕張市の人口は今、最盛期の10分の1に減ってしまっているんですが…。

百瀬 もしかしたら、今は意外と市民も夕張メロンを消費していないかもしれませんね。先日、農協と青年部とで、小学校での食育授業を行ったんです。種をまいてから収穫されるまでのメロンの一生や、収穫後の検査など消費者の手元に届くまでの仕組みを、映像も使って教えました。その時に小学生から「なんで夕張メロンは高いんですか?」って質問を受けたんです。

一同 (笑)

百瀬 「高いからお母さんが買ってくれないんです」って言うんですよ。「規格ごとに価格は違うんだよ」と答えたんですけどね。

原  より形がきれいだとか、ネットがピシッとかかって美しいとか、そういうことで規格は決まるけれど、出荷されている夕張メロンはどれもみんなおいしいんです。だから、「手頃な価格のメロンを買って食べてみてね」と伝えました。

本間 夕張市民でも、農家の子どもは頻繁に食べるかもしれないけれど、そうでなければ食べる機会が少ないですからね。

座談会の様子06

鈴木 小さい時から夕張メロンに触れる機会があると、地域の人のメロンに対する意識もさらに高くなるんじゃないでしょうか。

本間 そうですね。これからの取り組みとして、青年部独自でも食育活動を進めていけたらと考えています。畑や検査場も見てもらって、夕張メロンを口にしてもらえば、子どもたちは素直に夕張メロンのおいしさ、メロンづくりの大変さを感じて、価値を理解してくれると思うんですよ。また、おいしかった印象はずっと残っていて、覚えていると思うんですよね。子どもたちはいずれ消費者になるから、次の世代に消費もつながる。

鈴木 夕張といえば夕張メロンなんだし、夕張出身者としては夕張メロンの話はできた方が絶対いい。地元の人で夕張メロンについて熱く話せる人が増えればそのすごさも周りの人に伝わるから、小さい頃からの子どもたちへの働きかけは未来への大きな投資ですね。

本間 僕自身、岩見沢の高校に進学したんですが、やっぱりメロンの話はされましたよ。

村越 僕なんか大学時代、夕張出身ってだけであだ名が「メロン」だったよ。友達の親御さんに「最近、メロンくん来ないけどどうしてるんだい?」って聞かれたりもしたし。

一同 (笑)

鎌田 おみやげに持ってくることを期待されちゃったりしてね(笑)。でも、他に持ってくものないし、手みやげはどうしても夕張メロンだよね。

原  でも、中学生、高校生の時はわからなかったけど、今思えばそう言ってもらえるのもありがたいことだよ。それだけ、夕張や夕張メロンが印象に残っているってことでしょ?

村越 僕、高校生の時にケガして入院したんです。その病室に、偶然原くんも入院してたんです。それで、原くんのお父さんがお見舞いにきた時に、「いつもお世話になって…」とメロンを配るわけですよ。うちもメロン農家なんですけど(笑)。でも僕もおいしくいただいたし、みんなやっぱり喜んだね。

座談会の様子07

百瀬 メロンのおかげで人気者になった?

原  いやいや、そんなことないですよ!

本間 俺、入院したことないからなあ…。

原  でも、今はもう、メロンの旬の時期には絶対入院できませんよ?

本間 そうだね、今はケガをしても何しても、何が何でも仕事しないと。メロンを出荷しないといけないもの!

一同 (笑)

受け継ぐだけでなく、越えていく。生産者として、品質を守るだけではなく、さらに高める努力も怠りなく。

村越 僕は今年、先代から経営を譲られて、事業主になったんです。栽培に関してはすでにほとんど任されていたんですけど、事業主になって、今までは親の手の中で好き勝手やっていたんだなと痛感しました。例えば温度調節のためにハウスを開けるとして、僕はまだ、何回か調節するところを、うちの親は1回の作業で適切な開き具合にしてしまう。将棋でいうと僕が2手差すところを、1手で行ってしまうというか。経験に基づいた読みは「やっぱり、すげえなあ!」って思います。耳に痛いことを言われるので、小言はあんまり聞かないようにしてますけど(笑)

百瀬 うちはメロンづくりに関しては、ある時からぴたっと何も言われなくなりました。まあ、自分としても、親にあれこれ質問するのはちょっとっていうところもありますんで…。考えも違ったりするし、家族だと、…ほら、関係とかバランスとかがね、いろいろ問題がね。円満にやっていきたいし(笑)

一同 そうだね(笑)

百瀬 聞きたいことがあれば青年部の中で意見交換したりしますね。

鈴木 生産者一人一人がある意味職人だから、ものづくりをする以上、思い入れも強いし、ぶつかりあうことも必然的に起きますよね。逆に親御さんに譲ってばかりではいけないのかも。

村越 みんな、何かしら、「変えよう」という想いは持っているんじゃないですかね。

鎌田 天候が決して順調とはいえない中でも、良い品をバンバン出荷している人はいたりする。そういう人には、天候の影響を最小限に抑えるコツを、自分から教えてもらいにいったりしています。より良いものを作るために努力、工夫することはこの仕事の醍醐味ですし、親の背中を追いかけていたら、最終的に親と同じレベルのメロンはできるかもしれないけど、越えられない。

本間 メロンづくりも年々、発見があって進化・改善があるんです。だから周りの人にどうなんだろうってどんどん聞いて、新しい技術を教えたり、教えてもらったりする。昔からの考えは大事なベースとして、そこにさらにいろんな情報を取り入れる。それがあるからまた進化して、上昇していけるので、青年部でも勉強会を開催したりしています。

100年続くブランドづくりを目標に、守りたいこと、取り入れたいこと。

座談会の様子08

原  夕張メロンっていうのは、香りも、姿も、食感も味も、本当に素晴らしくていろいろな楽しみ方ができるメロンです。僕は夕張メロンが届いたら、まずその独特の芳香を楽しんでいただきたいなと思います。届いた時に部屋中に香りが広がる。それも夕張メロンの一つの楽しみだし、魅力ですよ。

鎌田 僕は、夕張メロンはやっぱり、唯一無二で、すばらしいフルーツだと思う。でもそれは食べて初めて実感できることなので、とにかく一度食べていただきたいです。それで、「おいしいの輪」が広がってもらえればと思います。

村越 夕張メロンは北海道の初夏を彩るフルーツと言われますが、本当に、旬の時期以外は出荷されない。9月や10月には食べたくてももう品物がないんです。だから、旬を感じて食べていただきたいですね。生産者としては、50周年を迎えて一区切りというところですが、これからまたいろんなこと、新しいことに挑戦していきたい。足下はしっかり見つつ、一歩ずつやっていきたいと思います。

百瀬 夕張メロンを買っていただいた方には、とにかく感謝、感謝の言葉しかありません。規格に関わらず、「買って良かった!」と思っていただけることが第一に大切と思っています。メロン栽培は一年一年の積み重ね。今年で誕生から52年目ですけど、53年目も、次へ向かうというその積み重ねでしかないんですよね。

鎌田 次の50年を刻むにも、やっぱり一歩一歩が大切だと思っています。

原  今青年部には42名部員がいます。僕たちは一人じゃ何もできない。切磋琢磨し、時にはぶつかり合いながら、先輩後輩問わず、みんなで一緒に夕張メロンを盛り上げていくしかない。

本間 青年部員は若い後継者ですから、僕たち若い力が生産力を高めて、次につなげていくことは何より重要ですよね。

鈴木 農協や取引先、夕張メロンに関わる人たちが、長い時間をかけて生産者の努力の結晶を消費者に届けることを積み重ねてきた。夕張メロンというブランドが築かれたのは、そのネットワークのたまものだと思うんです。今年は最高の出来ですし、食べたことのない方にはまず今年食べていただいて、大切な人にも贈っていただいて、夕張の応援もしていただきたい。お願いばかりですけど、推薦するには理由がある。本当においしいものじゃないと生き残れない世界で続いてきたブランドには、確かな良さがありますから。

本間 僕としては、食べ物である以上、「おいしい」という一言が一番大事な言葉なんですね。そして、おいしいと自然と笑顔になると思うんです。そういうメロンこそが、この先も続いていくブランドメロンだと思っています。これまでの歴史をしっかりと背負いながら、生産技術にもブランドづくりにも良いものは取り入れて、食べた人が笑顔になる夕張メロンをずっと作り続けていきたいと思います。

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